近江八幡で心臓リハビリテーションの講演をさせていただきました。
- 2024年6月7日
- 心臓リハビリテーション
こんにちは。理学療法士の澁川です。
先日、近江八幡市で開催された「第11回近江八幡心不全地域連携の会」にて、講演させていただきました。
会場は、近江八幡市立総合医療センター内のよしぶえホールというところでした。
今回私たちに与えられたタイトルは、「クリニックにおける心不全患者の心臓リハビリテーションと今後の課題」でした。
南草津ひだまりハートクリニックを代表して行って参りました。
開院してまだ数か月しか経っていない私たちですが、応援の意味も込めてご依頼くださった白山院長(近江八幡市立総合医療センター)はじめ関係者皆様へ、この場を借りて心よりお礼申し上げます。
近江八幡市立総合医療センターの医療スタッフ皆様は仲が良さそうで、素晴らしい雰囲気だったのが印象的でした。大変お世話になりました。
当日は時間の都合上、終盤の内容を割愛しました。
せっかくなので割愛した内容の一部をここでご紹介します。
日本の心臓リハビリテーションの現状は、地域の基幹病院により急性期(病気の発症や手術後間もない期間のこと)を中心に実施されています。
私たちのような維持期(急性期・回復期での治療が終了し、比較的安定した状態において病気や日常生活動作能力の維持・向上を目指す期間のこと。脳卒中のリハビリにおいては「生活期」とも呼ばれています。)を担うクリニックで心臓リハビリテーションを行っている施設は全国でもまだ少なく、滋賀県ではとても珍しいと思います。
維持期の心臓リハビリテーションの効果はこれまで欧米から多く報告されてきましたが、近年では本邦からの報告も散見されます。
例えば2020年の報告では、維持期まで行う心臓リハビリテーションの長期的な有益性が示されています。
Nakayama A, et al. A large-scale cohort study of long-term cardiac rehabilitation: A prospective cross-sectional study. Int J Cardiol. 2020 Jun 15;309:1-7. doi: 10.1016/j.ijcard.2020.03.022. Epub 2020 Mar 24.
この論文では、約10000人のデータを統計解析(Propensity score matching)して最終的に730人ずつの3グループで検討されています。
どのような内容かといいますと、
心臓病をお持ち(心血管疾患)の患者さんに対する心臓リハビリテーションを入院中のみ実施したグループ、さらに150日間の回復期まで実施したグループと比べて、維持期にて平均800日の長期的な心臓リハビリテーションを実施したグループの方が、その後の主要心疾患イベント(心臓死、急性冠症候群、脳梗塞、急性大動脈症候群、心不全による入院)や死亡するリスクが有意に低下していた(統計学的に低下することを証明した)、と報告しています。
この対象者には、狭心症・心筋梗塞など虚血性心疾患だけでなく、心不全の患者さんも10%ほど含まれています。
やはり、頑張って長く心臓リハビリテーションを続けていただいた方が結果として病気の進行を予防したり現在の生活を維持できる可能性が高いと考えられます。
またこの論文では、自宅から病院までの距離30㎞が長期的な心臓リハビリテーションに参加するための最適なカットオフ値だったと報告しています。
つまり、自宅から30km以内の施設なら心臓リハビリテーションを続けられる可能性があるということです。
この中で維持期の心臓リハビリテーションを続けられたグループにおいて、平均距離は16㎞でした。
草津市に位置する南草津ひだまりハートクリニックから16㎞というと、近江八幡市や京都市東山区からも来られる距離になります。
草津市より遠方にお住まいの方で、「心臓リハビリテーションに興味はあるけれど通院は難しいかな」と考えておられる方でもぜひ一度ご相談いただければ幸いです。
個人的には、このように1万人のデータをしっかり統計解析し論文として世に公表された著者らの努力にただただ敬服します。自分たちが信じて日々患者さんに行っていることを支持してくれる内容で、とても勇気づけられます。
今後とも地域の皆様の循環器病予防に少しでも貢献できるよう、クリニック一丸となって取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。