スマートフォンアプリによる血圧管理は効果があるのでしょうか?|南草津ひだまりハートクリニック|草津市南草津の内科・循環器内科

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スマートフォンアプリによる血圧管理は効果があるのでしょうか?|南草津ひだまりハートクリニック|草津市南草津の内科・循環器内科

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スマートフォンアプリによる血圧管理は効果があるのでしょうか?

こんにちは。理学療法士の澁川です。

 

2025年最初のブログ投稿は、ヘルスケアについてです。

 

ヘルスケアの意味や定義は多岐にわたるため、ここでは健康である(健康を維持する)ことを目指す「健康管理」の視点から書かせていただきます。

 

現在多くの方がスマートフォンを使用されています。スマートフォンが普及したことで、デジタル技術を活用した健康管理が可能となっています。

 

具体的な話をすると、ヘルスケアに関するアプリケーション(以下、アプリ)をスマートフォンにダウンロードすることで、血圧や脈拍・身体活動など様々な項目を把握することができます。

有名なところでは、腕時計型のアップルウォッチを用いて睡眠の質まで測定できるようになっていますね。

 

さて、ここからが本題です。

 

仮に血圧計で測定した後、そのまま数値がスマートフォンの中にある血圧管理アプリへ自動送信されるとします。それらは自然にグラフで示され、あなたはそれを眺めるだけで日々の血圧の変化を把握できるようになります。

 

とても便利に感じますね。

 

でも、今まで血圧計の数値を丁寧に紙に書いて、手書きのグラフを描いていた方にとってそれは良いことなのでしょうか?

もしかすると血圧が少しずつ上昇している変化に気付くことができるのは、自分で書き写している方かもしれません。

 

そもそも、スマートフォンアプリのようなデジタル技術を活用した血圧管理は有効なのでしょうか?

 

この疑問に答えるべく、日本高血圧学会が経済産業省および日本医療研究開発機構(AMED)の支援をうけて、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」を作成することになりました。

 

今回、その事業の中のシステマティック・レビュー(SR)委員を拝命し、同じく委員となった全国の先生方と2023年から約1年間かけてスマートフォンアプリを用いた世界中の研究を調査しました。

 

成果を福岡大学医学部衛生・公衆衛生学教室の阿部真紀子先生がまとめられております。

20249月には、成果論文がHypertension Research 誌(IF4.3)に掲載されました。(PMID: 39396072

また同10月には、第46回日本高血圧学会総会にて成果をご発表されました。

 

私も共著者の一人として氏名が記載されておりますので、簡単に内容を紹介いたします。

*筆頭著者である阿部先生、また日本高血圧学会・Hypertension Research編集部から掲載許可を頂いております。

 

日本において2027年にはスマートフォンの普及率が90%を超えると予想されている中、米国の調査では180以上のスマートフォンアプリが血圧の自己管理をサポートしていることが明らかとなっています。

スマートフォンやタブレット端末などのモバイルデバイスの無線技術を利用した健康管理や医療サポートを総称してモバイルへルス(mHealth)と呼びますが、これまで血圧測定のために設計されたアプリなどは高いエラー率が示され、不正確であることが指摘されていました。血圧管理のためのアプリはヘルスケアに貢献する貴重な補助ツールとして推奨に値するのか、検証が必要です。

そこで私たちは、日本高血圧学会の委託を受け、デジタル技術を活用した血圧コントロールのガイドライン策定を目的としたシステマティックレビューを実施しました。検索範囲はスマートフォンアプリが登場した時期に合わせて2007年以降に発表された研究に限定し、2007年から202381日までの文献を系統的に検索しました。

7,385件の研究から、最終的に46,569人が参加した76件の研究が調査対象に選ばれました。

主要アウトカムは6か月追跡時の血圧の変化です。

このシステマティックレビューとメタ解析の結果としましては、スマートフォンアプリを用いた介入と6か月追跡時の血圧低下との間に有意な関連があることが明らかになりました。つまり、スマートフォンアプリでの血圧管理は高血圧患者にとって6か月後までは確かに効果があった、ということです。さらに注目すべきは、血圧測定値を無線送信するアプリを使用した参加者でより大きな血圧低下が観察されましたが、他の機能の有無による血圧低下には明確な差は認められませんでした。これは、Bluetoothなどのワイヤレス通信によって血圧測定値がスマートフォンへ送信される機能がついているアプリを用いる方が血圧低下の役に立つ可能性がある、ということです。

 

私たちの研究を含む多くの事業成果をもとに今年以降「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」が日本高血圧学会から策定される予定です。

 

このような事業を通して、皆様の生活や循環器病予防へ少しでも貢献できれば幸甚です。

 

長文を読んでいただき、ありがとうございました。

 

今後とも当クリニックをよろしくお願いいたします。

 

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