心と体のストレスが原因?「たこつぼ型心筋症」について
- 2025年9月12日
- 内科
こんにちは。臨床検査技師の池田です。
今回は、「たこつぼ型心筋症(しんきんしょう)」という、たくさんの別名を持つ心臓の病気についてお話ししたいと思います。
実はこの病気、たくさんの別名を持っています。
日本では「たこつぼ型心筋症」という病名が一般的ですが、
海外では「ブロークン・ハート症候群(Broken Heart Syndrome)」「ハッピー・ハート症候群(Happy Heart Syndrome)」などの別名があります。
数年前に、ある有名なドラマにて「Happy Heart Syndrome」として紹介され、少し認知度があがったと思われます。
たこつぼ型心筋症は、強い精神的(情動的)または肉体的ストレスが原因で一時的に心臓の動きが悪くなってしまう病気です。
特に典型的たこつぼ型では、心臓の動きが先端で悪くなり、拡張した様がまるで“たこつぼ”の形に似ているため、「たこつぼ型心筋症」との名前が付けられました。
この病気の原因である「強い精神的ストレス」と聞くと、多くの人が悲しい事や辛い事(Broken Heart)などを考えてしまうのですが、
実は、嬉しい事や喜び(Happy Heart)でも起こることがあります。
一方、「強い肉体的ストレス」とは、転倒、外傷、手術などがあげられます。
この病気は、特に高齢の女性に好発すると言われます。
主な症状としては、以下のようなものがあります:
・突然の胸の痛み
・息切れ
・動悸(どうき)
・吐き気
・呼吸が苦しくなる(呼吸困難)
これらの症状は、急性心筋梗塞という別の心臓の病気とも似ているため、病院ではしっかりと検査を行い、正確に診断をつける必要があります。
また、急性期の場合は心電図でも急性心筋梗塞に類似した波形となるため、心電図検査に加えて様々な検査を行い、両者の鑑別が必要となります。
たこつぼ型心筋症では、冠動脈(心臓を養っている血管)に異常がなく、心臓収縮に異常を認めます。
つまり、心臓に栄養を送っている血管は詰まっていないのに心臓の動きだけが一時的に悪くなってしまう、という特徴があります。
そのため、数週間で自然に回復することが多いです。
たこつぼ型心筋症自体は、ほとんど自然回復するので問題ないのですが、合併症には注意が必要です。
主な合併症には、以下のようなものがあります。
・心尖部壁在血栓 (心臓の中に血のかたまりができる)
・心破裂 (心臓の壁が破れる)
・左室流出路障害 (血液が流れる心臓の出口が狭くなり、流れにくくなる)
・右室心尖部無収縮 (心臓の一部が動かなくなる)
心臓超音波検査では、これらの合併症がないかを確認します。
以上、原因が独特なため、数々の別名を持つ「たこつぼ型心筋症」の紹介をさせていただきました。
「心がつらくても嬉しくても起こる、こんな病気もあるんだ」と少しでも認知していただければと思います。