突然の胸の痛み、原因はストレス?心筋梗塞に似た「たこつぼ型心筋症」の症状と治療
- 2026年9月9日
- 内科

「急に胸が締め付けられるように痛くなったけれど、少し休んだら落ち着いた」
「最近、強いショックを受ける出来事があってから、息苦しさや動悸が続いている」
強い精神的・肉体的なストレスが引き金となり、心臓の動きが一時的に悪くなる「たこつぼ型心筋症」という病気をご存知でしょうか。
症状は命に関わる「急性心筋梗塞」と非常に似ており、自己判断で「ただのストレスだから」と放置するのは大変危険です。今回は、滋賀県草津市・大津市周辺で突然の胸の痛みや動悸にお悩みの方へ向けて、循環器専門医が「たこつぼ型心筋症」のメカニズムと、心筋梗塞との違い、そして当クリニックの専門的な検査・治療について詳しく解説します。
▶︎目次
「心筋梗塞」とそっくり?たこつぼ型心筋症とは
たこつぼ型心筋症は、突然の激しい胸の痛みや息苦しさなどを引き起こす心臓の病気です。超音波(エコー)検査で心臓の動きを観察すると、全身に血液を送り出す役割を持つ「左心室(さしんしつ)」の先端部分が全く動かなくなり、根元だけが過剰に収縮する様子が見られます。
その異常な収縮をした心臓の形が、日本の伝統的な漁で使う「蛸壺(たこつぼ)」に似ていることから、1990年代に日本の医師によって命名されました。現在では海外でも「Takotsubo cardiomyopathy」として世界共通の医学用語となっています。
発症時の主な症状
- 突然の激しい胸の痛み、締め付けられるような圧迫感
- 呼吸が苦しい、息切れがする
- 冷や汗、急な動悸、めまい
- 吐き気や嘔吐を伴うこともある
これらの症状、さらには心電図の波形の変化や血液検査の結果(心筋ダメージの数値上昇)まで、心臓の血管が詰まる「急性心筋梗塞」と非常に似ているため、初期段階では見分けがつきにくく、救急医療の現場でも迅速かつ慎重な診断が求められます。
なぜ起こる?発症の引き金となる「ストレス」
この病気の最大の特徴は、「精神的・肉体的な強いストレス」が発症の大きな引き金になる点です。海外では「ブロークン・ハート症候群(傷心症候群)」と呼ばれることもあります。
発症のきっかけとなりやすい要因
- 精神的ストレス: 大切な家族やペットとの死別、激しい怒り、大きな不安、経済的なトラブル、職場での深刻な対人関係など
- 肉体的なストレス: 喘息の重積発作、重い感染症、骨折や大きな手術、過酷な労働による過労、激しい痛みなど
- 自然災害: 過去の大きな地震(新潟県中越地震や東日本大震災など)の後に多発したことが報告されています
強いストレスを感じると、体内で交感神経が急激に活発になり、「カテコラミン(アドレナリンやノルアドレナリンなど)」というホルモンが血液中に大量に分泌されます。これが心臓の筋肉(心筋)に対して一時的な毒性や過度な負担をもたらし、動きを麻痺させてしまうと考えられています。
また、患者さんの約8割〜9割が「閉経後の女性」であることも特徴です。心臓を保護する働きを持つ女性ホルモン(エストロゲン)が減少することが、ストレスへの耐性を下げ、発症しやすくなる要因の一つとして指摘されています。
心筋梗塞との決定的な違い(比較)
症状はそっくりですが、病気の根本的なメカニズムと「その後の回復」には大きな違いがあります。
上記のように、たこつぼ型心筋症は「血管の詰まり」がないため、予後(その後の経過)は比較的良好とされています。しかし、発症直後の急性期には、重症の心不全や命に関わる不整脈、心破裂などを合併するリスクがあるため、心筋梗塞と同じように一刻も早い受診と厳重な管理が必要です。「ストレスだから放置しても大丈夫」ということは決してありません。
循環器専門医による迅速な診断と治療アプローチ
「胸が痛い」と感じたとき、それが心筋梗塞なのか、たこつぼ型心筋症なのかをご自身で判断することは不可能です。命に関わる疾患を見逃さないためにも、速やかに循環器内科を受診する必要があります。
心臓超音波(エコー)検査と心電図・血液検査
当クリニックでは、心臓の動きをリアルタイムで確認できる超音波検査や心電図検査を迅速に行います。たこつぼ特有の「心尖部(先端)が動いていない」状態を客観的に評価します。また、血液検査で心筋へのダメージ指標(トロポニンなど)も確認します。
高度医療機関とのスムーズな連携(カテーテル検査)
血管の詰まり(心筋梗塞)を確実に否定するためには、心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)が必要になるケースが大半です。当クリニックで「心筋梗塞の疑いが強い」「カテーテルでの精査が必要」と判断した場合は、近隣の高度医療機関へ速やかにご紹介し、安全を最優先に連携治療を行います。
回復期のお薬の調整と心臓リハビリテーション
急性期を脱し、たこつぼ型心筋症と診断された後は、心臓の負担を和らげるお薬(ベータ遮断薬やACE阻害薬など)を用いて回復をサポートします。また、当クリニックの専用リハビリ室にて、専門の理学療法士と体力回復のための安全な「心臓リハビリテーション」を行うことも可能です。
よくある質問(Q&A)
- Q1
完全に元の状態に回復するまで、どのくらいかかりますか? - A. 個人差はありますが、多くの方は数週間から数ヶ月(1〜2ヶ月程度)で心臓の動きが元通りに回復します。ただし、回復するまでの間は心臓の働きが落ちているため、息切れやむくみなどの症状が出ないよう、お薬によるサポートと医師による定期的な経過観察が不可欠です。
- Q2
ストレスをなくせば治りますか?再発はしますか? - A. ストレスの原因を取り除くことは回復に非常に重要ですが、すでに発症している場合は「気絶した心臓」を休ませる医学的な治療が必要です。大半の方は一度回復すれば問題ありませんが、ごく稀(約5%未満)に再び強いストレスを受けた際に再発することが報告されています。
- Q3
手術は必要になりますか? - A. たこつぼ型心筋症そのものに対して、血管を広げるバイパス手術やステント留置術などの「治療を目的とした手術」は行いません。お薬による内科的治療が中心となります。ただし、初回の診断時に心筋梗塞ではないことを確認するためのカテーテル「検査」は必要になります。
- Q4
男性でも発症しますか? - A. 患者さんの大部分は中高年(閉経後)の女性ですが、男性や若い方でも極度のストレスがかかった場合に発症するケースはあります。男性の場合、肉体的なストレス(重症感染症など)が引き金になることが多い傾向にあります。性別や年齢に関わらず、突然の胸の痛みには注意が必要です。
- Q5
予防するためにできることはありますか? - A. 日常的にストレスを溜め込まず、睡眠やリフレッシュの時間を確保することが基本です。しかし、突然の事故や死別などの強いストレスを完全に防ぐことは不可能です。最も重要な防御策は「もし胸に強い痛みを感じたら、我慢せずにすぐに医療機関を受診すること」です。
- Q6
検査(エコーなど)は痛いですか? - A. 当クリニックで行う心臓超音波(エコー)検査や心電図検査は、胸にゼリーを塗って機器を当てたり、シールを貼ったりするだけですので、痛みや体への負担は全くありません。リラックスして受けていただけます。
まとめ:胸の痛みは「ただのストレス」と放置せずにご相談を
「ストレスで胸が痛いだけだから、寝ていれば治るだろう」と痛みを我慢することは、非常にリスキーです。万が一、それが心筋梗塞であった場合、取り返しのつかない事態を招きかねません。
たこつぼ型心筋症であっても、急性期には不整脈や心不全のリスクがあるため、適切な医療管理が必要です。突然の胸の痛みや、強いストレスを感じた後の息苦しさなど、少しでも不安な症状があれば、お早めに循環器専門医のいる当クリニックへご相談ください。
南草津ひだまりハートクリニックへのご予約・アクセス
当院は、患者様の待ち時間を減らし、スムーズに受診していただくために【24時間受付のWeb予約】を導入しております。
- 診療科目: 循環器内科、内科、心臓リハビリテーション科
- アクセス: 滋賀県草津市南草津3丁目4番7(南草津駅から徒歩8分)
- 駐車場: 14台完備(大津方面や車通勤の方も通院しやすい環境です)
- グループ院との連携: 「南草津おなかと胃大腸カメラのクリニック」「南草津あおぞらクリニック」と連携し、全身の健康を総合的にサポートします。
「ひだまり」のような温かい雰囲気の中で、循環器専門医をはじめとするスタッフがあなたの健康づくりを丁寧にサポートいたします。
この記事の監修者


滋賀医科大学にて長年、循環器内科の診療・研究・教育に携わり、2023年12月に当院を開院しました。専門性の高い診療とチーム医療を提供しています。
略歴
資格
・医学博士
・日本内科学会 総合内科専門医・指導医
・日本循環器学会 循環器専門医
・日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士
・日本心不全学会 心不全緩和ケアコースHEPT指導医講習会受講済